蕨、薇、虎杖、蕗、筍などなど、3月下旬から5月頃まで、里山では山菜が採れる。
蕨はよく陽のあたる緩やかな斜面。薇も似たような場所にある。
虎杖(熊野ではゴンパチと呼ぶ)は、生える場所によって太さや色合いが異なる。
道路脇や河原などに生えてくる細くて葉のたくさんついた虎杖は、食用には向いていない。
「のら」の近辺で言うと、東向き斜面の石垣の下、特に角の三角地帯には立派な太い虎杖が生える。石垣の奥にすっと伸びる様は、まるで無社殿に鎮座する御神木のようである。
自称「ゴンパチニスト」の僕は、太く真っ直ぐに伸びた虎杖を目にすると採らずにはいられない。採った虎杖はとりあえず花瓶に差し入れる。虎杖がまるで生花のように我が家の台所を飾る。
ゴンパチニストのメニューを少し紹介しておこう。
写真左上から
①生けゴンパチ②雑魚と梅味噌和え刺身ゴンパチ③カレーゴンパチ④ひら天きんぴらゴンパチ⑤ゴンパチジャム⑥ゴンパチーノ⑦巻き寿司ゴンパチ⑧メンマゴンパチ
おやつに、かりんとうゴンパチ
そして、夏にぴったりゴンパチゼリー
(レシピはまた紹介します)
あまり知られてはいないが、熊野地域ではオニヒカゲワラビやシオデという山菜も採れる。どちらもアク抜きをする必要はなく、採ったその日に簡単に食べられるのが嬉しい。
オニヒカゲワラビ
蕨の約3倍の大きさで、毛が生えており、なかなかグロテスクな様相をしている。
洗って毛を落とし(この毛が残っていると後味が悪い)茹でてよし、炒めてよし、粘り気が旨味を引き出す。
シオデ
草むらからウナギが飛び出してきたかのように見え一瞬ドキッとする。
先端は龍の髭のように伸び、木の枝を捕まえぐんぐん伸びる。ゴムのように柔らかく、決して美味しそうには見えない。
しかし、これが絶品なのである。
高級なアスパラガスのようで(高級なアスパラガスを食べたことはないけど…)サクッと茹でれば綺麗な緑になり、龍の髭も気にすることなく食べられる。
妙な姿といえば、薇もそうだろう。
綿に包まれ、くるりと巻いた姿が薇だと知っているから美味しそうに見えるが、全く知らなければ食べようとは思わないだろう。
「のら」の庭先には立派な薇が生えている。長けると1メートルほどになる。今年は薇がたくさん採れて嬉しくて、採った薇を音符のように並べ「庭先の太き薇ドレミファソ」と俳句を詠み、炊いて食べたのだが、どうやらその中にナチシダが混じっていたようで、僕らは二人揃ってお腹を下した。
今年の薇は毛深いやつがあるなぁ…と思いながら綿を取っていたのだが、まさかナチシダだったとは思いもよらなかった。毒のあるよく似た植物はすぐ近くに生えることを改めて気がついた。
そして、我が家の食卓を潤したのが筍である。次々に姿を現す筍を掘り起こすのは楽しいらしく、妻は毎朝のように竹林へ出かけ採ってきた。その場で皮を剥き、持ち帰ってすぐ湯がく。日を浴びでいないのでアクはほとんど感じられない。
筍ご飯に、味噌汁に、わかめと炊いたり、春巻きにしたり、佃煮も多量に仕込み、余った筍は砂糖をまぶして冷凍保存。
山菜は我が家の家計を助け、僕らの腸内環境を整えてくれた。
山菜バンザイ!